筋筋膜性疼痛症候群による腰痛
「腰が痛い…」
その痛みが、レントゲンでは異常がないのに続く場合、それは「筋筋膜性疼痛症候群」が原因かもしれません。
この症状は、筋肉そのものだけでなく、筋肉を包み込む「筋膜」の機能低下が深く関わっています。驚くべきことに、米国腰痛ガイドラインでは、整形外科で腰椎椎間板ヘルニアと診断されたケースの95%が、実際には筋筋膜性疼痛症候群による痛みであると提唱されています。
それほど、筋筋膜性疼痛症候群は私たちの日常生活に身近なものなのです。
筋膜とは?
身体を支える第二の骨格
筋膜は、筋肉だけでなく、骨や内臓、神経、血管など、身体のあらゆる構成要素を包み込み、それぞれの場所につなぎとめている、非常に薄い網状の結合組織です。
全身タイツのように身体全体を覆っており、各組織がスムーズに滑り合うための潤滑油のような役割や、組織同士の隔壁となる役割、さらには姿勢の保持や、力(張力)を全身に伝える役割も担っています。
この筋膜は感覚神経が豊富で、痛みを感知しやすい部位でもあります。
筋膜と腰痛の密接な関係
健康な筋膜は弾力があり、滑らかな状態を保っています。
しかし、長時間の不良姿勢、繰り返しの動作、ケガ、精神的ストレス、運動不足、脱水など、様々な要因によって筋膜は硬くなったり、周囲の組織と癒着したりすることがあります。
筋膜の機能が低下すると、その中を走る筋肉の動きが制限され、血行が悪くなります。
これにより、筋肉への栄養供給が滞り、疲労物質や痛み物質が蓄積しやすくなります。
この筋膜の機能低下や癒着が原因となって痛みやしびれを引き起こす状態が「筋筋膜性疼痛症候群」です。
腰部にこの状態が発生すると、私たちは「腰痛」としてその不快な症状を感じるのです。
姿勢の悪さが筋膜を硬くする
腰痛を招くメカニズム
特に、日常的な姿勢の悪さは筋筋膜性腰痛の大きな要因となります。
私たちの身体は、重力に対してバランスを取りながら立ったり座ったりしていますが、猫背や反り腰、左右どちらかに重心が偏るなど、偏った姿勢を続けると、特定の筋肉や筋膜に継続的に過剰な負担がかかります。
例えば、猫背の姿勢では、背中の筋肉(特に脊柱起立筋や菱形筋)が常に引き伸ばされた状態になり、逆に身体の前面(大腰筋や腹筋群)は縮こまりやすくなります。
このような筋肉のアンバランスが生じると、関連する筋膜も引っ張られたり縮んだりして、柔軟性を失い硬くなっていきます。
硬くなった筋膜は、その部位だけでなく、筋膜の繋がりを介して離れた部位にも影響を及ぼします。
例えば、腰部の筋膜の硬さが股関節の動きを制限したり、逆に股関節周りの筋膜の硬さが腰に負担をかけたりすることもあります。
このように、姿勢の悪さから生じる筋肉のアンバランスが筋膜の癒着や硬化を招き、それが血行不良や痛み物質の蓄積を引き起こし、最終的に腰痛として現れるのです。
筋筋膜性腰痛に特に関与しやすい筋肉としては、以下のものが挙げられます。
- 広背筋:
非常に大きな筋肉で、脇の下から背中、腰まで付着する筋肉です。猫背反り腰を誘発し、腰の痛みに関与します。
- 脊柱起立筋:
背骨に沿って走行し、姿勢の維持に重要な筋肉。猫背・反り腰などで常に緊張しやすいです。
- 腰方形筋:
腰の深部にあり、体幹の側屈や安定に関わる。左右のバランスの崩れや不良姿勢で負担がかかりやすいです。
- 大臀筋・中臀筋・梨状筋:
お尻の筋肉。股関節の動きや骨盤の安定に重要で、機能低下や硬さが腰に影響することがある。梨状筋が硬くなると、坐骨神経を圧迫し、腰やお尻、足にかけての痛みを引き起こすことがあります。(梨状筋症候群)
- 大腿四頭筋:
太ももの前側の筋肉です。骨盤の傾きに関与し、硬くなると反り腰になり、腰に負担をかけます。
- ハムストリングス:
太ももの裏側の筋肉。大腿四頭筋と拮抗関係にあり、骨盤の傾きに関与します。硬く、弱くなると反り腰になり、腰に負担をかけます。
- 腸腰筋(大腰筋・小腰筋・腸骨筋):
腰椎から股関節にかけて走行するインナーマッスルです。長時間座ることで縮こまりやすく、反り腰を誘発し、腰痛の原因となることがあります。
筋筋膜性腰痛の特徴的な症状
筋筋膜性腰痛は、他の腰痛と区別されるいくつかの特徴的な症状があります。
- 特定の部位に圧痛(トリガーポイント)がある:
筋肉や筋膜の中に硬いしこり(トリガーポイント)が存在し、そこを押すと痛みが感じられたり、離れた部位にまで痛みが響いたり(関連痛)することがあります。
- 深部の鈍痛: 表面的な鋭い痛みではなく、腰の奥の方に感じるような重だるい鈍痛が多いです。
- 同じ姿勢を続けると痛みが悪化する: 長時間座っていたり、立ちっぱなしでいたりすると、痛みが強まる傾向があります。
- 動き始めに痛みを感じやすい: 朝起きた時や、長時間同じ姿勢でいた後に動き出す際に、こわばりや痛みが強く出ることがあります。
- 特定のストレッチで痛みが誘発されることがある: 原因となっている筋肉や筋膜を無理に引き伸ばすような動きで痛みが走ることがあります。
ただの腰痛ではない可能性も(鑑別すべき疾患)
「筋筋膜性腰痛」は、筋肉や筋膜の機能不全が原因ですが、腰痛の中には他の病気が隠れている可能性もゼロではありません。当院では、安全に施術を進めるため、まずこれらの疾患の可能性がないかを慎重に鑑別します。
特に、以下のようなサインがある場合は、整体の前にまず専門の医療機関を受診してください。
- 安静にしていても痛みが楽にならない、夜中に痛みで目が覚める
- 足に力が入らない、感覚が麻痺する、尿や便が出にくい
- 原因不明の発熱や体重減少を伴う
これらを踏まえ、鑑別が必要となる主な疾患には以下のようなものがあります。
- 椎間板ヘルニア 椎間板の中身(髄核)が飛び出して神経を圧迫する疾患。腰の痛みに加え、お尻や足にかけて強い痛みやしびれ(坐骨神経痛)を伴うことが多いです。
- 脊柱管狭窄症 神経の通り道である脊柱管が狭くなり、神経が圧迫される疾患。少し歩くと足がしびれて歩けなくなり、休むとまた歩けるようになる「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」が特徴的な症状です。
- 腰椎すべり症・分離症 腰の骨(腰椎)が前後にずれたり、骨の一部が分離したりする状態。身体を後ろに反らす動きで痛みが強くなる傾向があります。
- 仙腸関節障害 骨盤にある仙腸関節という関節の不具合によって起こる腰痛。ベルトのラインより少し下のお尻のあたりや、足の付け根に痛みが出やすいのが特徴です。
- 坐骨神経痛 お尻から太ももの裏、足先にかけて現れる痛みやしびれの総称です。多くは、椎間板ヘルニアやお尻の筋肉の硬さ(梨状筋症候群)によって神経が圧迫されることで起こります。
- 内臓疾患からの関連痛 腎臓、婦人科系、消化器系の病気などが、腰痛として感じられることもあります。「いつもの腰痛と違う」「内側から響くような鈍い痛み」など、違和感がある場合は注意が必要です。
※当院では、重度のヘルニア、狭窄症、内臓疾患由来の腰痛以外は改善が可能です。特に坐骨神経痛などを引き起こしている根本原因(筋肉や筋膜の硬さ、関節の歪みなど)を的確に見つけ出し、症状を改善に導くことを得意としています。諦めずにご相談ください。
当院で「慢性的な腰痛」を改善出来る3つの理由
「腰を揉んでもらっても、すぐに痛みが戻ってしまう…」 それは、痛みの**“本当の原因”**にアプローチできていないからです。当院が、しつこい筋筋膜性腰痛を根本から改善できるのには、明確な3つの理由があります。
理由① 痛みの直接原因、「筋膜の癒着」を的確に剥がすから
筋筋膜性腰痛の多くは、筋肉を包む「筋膜」が癒着し、滑りが悪くなることで発生します。この癒着は、ただ揉むだけではなかなか解消されません。 私たちは、専門的な徒手療法や、必要に応じてIASTM(専用器具)を用いることで、この頑固な筋膜の癒着を的確に剥がしていきます。これにより、筋肉の動きがスムーズになり、血行が促進され、痛みや重だるさの原因を直接取り除くことができます。
理由② 腰を“頑張らせすぎている”本当の原因、「サボり筋」を見つけ出すから
なぜ、あなたの腰ばかりが疲れてしまうのでしょうか? それは、本来働くべきお腹のインナーマッスル(腹横筋)や、お尻の筋肉(大殿筋)が“サボって”いるため、その仕事をすべて腰の筋肉が肩代わりしている「代償動作」が起きているからです。 私たちは、詳細な動作検査や筋力検査で、この「サボり筋」を正確に特定します。腰だけを施術するのではなく、お腹やお尻の筋肉が再び正しく使えるように働きかけることで、腰への過剰な負担を根本から解消します。
理由③ 正しい身体の使い方を「脳に再教育」し、再発を防ぐから
良い姿勢を意識しても、気づけば元の悪い姿勢に戻っていませんか? それは、長年のクセによって、脳が「腰に負担のかかる動き」を“当たり前”だと記憶してしまっているからです。 私たちは、整体で身体のバランスを整えた上で、コアコンディショニングや簡単なエクササイズを行います。これにより、脳に対して「これが楽で効率的な身体の使い方だよ」と再教育します。正しい動きのプログラムを脳に上書きすることで、無意識でも腰に負担のかからない生活が送れるようになり、痛みの再発を本気で防ぎます。